税務経営コラム

芦屋税理士経営情報「中小企業の借入打開策1」

2012.05.22

中小企業の借入れ環境は依然厳しいといわれていますが、これを打開する方法はあるのでしょうか。

今回から3回に分けて説明していきたいと思います。

借入れ環境悪化の背景多くの中小企業が感じているとおり借入れ環境が厳しくなっているとすれば、背景に何があるのか、日本政策金融公庫の調査等を基にみてみます。

中小企業と金融機関の間には「情報の非対称性」という構造的な問題が存在します。

借り手である企業は、自らに返済力があるかどうかをよくわかっていても、貸し手である金融機関は、それを完全に知ることはできません。

こうした情報の非対称性を緩和するため、金融機関はコストをかけて借りての信用状態を調査します。このコストは固定的なものであり、貸出し単価が大きくなると、これに比例して大きくなるわけではありません。

このため、大企業への貸出しの場合は、金額が大きく金利等によるリターンも大きいため、コストを吸収し採算が取りやすくなります。一方、中小企業への貸出しは、金額が小さくリターンも小さいため、コストを吸収しきれず採算が取りにくくなっています。そこに、景気後退で民間金融機関の財務がダメージを受けていることが拍車をかける結果となっています。

リーマンショック以来、民間金融機関が保有する有価証券の評価損は大きく膨らみ、また、景気後退するなか貸出先の業績が悪化したことで、民間金融機関は企業の信用格付けを下げ、相応の貸倒引当金を積み増さなければならなくなりました。

このために収益は自ずと圧迫されました。

先行きに明るい材料が乏しい現状において、民間金融機関としては貸出しを膨らませることに慎重にならざるを得ません。

しかし、大企業向けの貸出しは増加しています。

これはリーマンショック以来債権市場が冷え込んでおり、大企業はコマーシャルペーパーや社債による資金調達が難しくなり、借入れへとシフトするほかありませんでした。大企業からの資金需要が増大し、民間金融機関がこの資金需要に対応しました。この結果、中小企業に対する貸出しは、いっそう慎重になったともいえます。